[宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧](https://db2.sido.keio.ac.jp/kanseki/bib_frame?id=007543)
単字_出現形は、可能な限り使用されている字形に近いものを採用した。
漢語の認定は、朱点、墨圏点による句切点に依った。
声点は次の3種が認められる。
①墨圏点:仁安三年の朱句切点と同時に加点されたとおぼしきもの。全巻にわたって加点されるが、詳密に付される部分(ア)(66行目「有」から122行目「故」。ただし85行目「答」から87行目「説」に墨圏点のない部分がある)と、まれに付される部分(イ)(1行目「故」から66行目「故」、15例)、きわめてまれな部分(ウ)(123行目「即」から316行目「思」、10例)がある。(イ)(ウ)に付される圏点は小さく(たとえば10行目「於」、14行目「初」、56行目「申」)、(ア)に付される圏点は大ぶりなものが多いこと(たとえば67行目「於」、110行目「初」、115行目「能」)、(イ)(ウ)に見られる小ぶりな圏点は単点しかなく、双点は見当たらないことから、別筆の可能性がある。
②朱声点A:前半の1行目「許」から87行目「説」に出現する。詳密に付される部分(1行目「許」から66行目「故」、84行目「應」から87行目「説」)と、部分的に付される部分(66行目「有」から84行目「聲」、3例)がある。墨圏点のうえに重ねられていることから、墨圏点より後の加点である。また墨圏点が稠密で、朱声点が部分的に付される部分(66行目から84行目)では、墨圏点のない字に朱声点を施す場合(74行目「今」〔朱〕去、75行目「立」〔朱〕入の2例)が見られることから、基本に墨圏点の不足部分を補おうとする態度が看取される。また墨圏点と朱声点Aが同時に加点される35例をみると、修正する場合(11行目「成」〔墨〕去→〔朱〕去濁、15行目「合」〔墨〕入→〔朱〕入濁、56行目「叙」〔墨〕平→〔朱〕平濁など)が5例あるが、残りの30例はそのまま重ねている。
③朱声点B:87行目「離」から316行目「思」に出現。朱声点Aよりもやや朱色が濃い。詳密に付される部分(87行目「離」から244行目「故」(ただしこのうち94行目「而」から101行目「相」まで、105行目「犯」から112行目「三」までの二箇所は朱声点なし)、263行目「法」から316行目「思」)と、部分的に付される部分(244行目「如」から262行目「彼」、9例)がある。墨圏点のうえに重ねられていることから、墨圏点より後の加点であることが分かる。墨圏点が稠密な87行目「離」から122行目「故」では、墨圏点と同じ声点をそのまま上書きしている。朱声点Aとの重なりはなく、87行目を境に切り替えられていることから、朱声点Aと朱声点Bの先後関係は不明ながら、同一の系統のものである可能性が高く、加点年代もほぼ同時であると推定する。
①墨圏点を〔墨〕、②朱声点Aと③朱声点Bをともに〔朱〕とし、墨点、朱点の順に表示する。また①の上に②③を重ねている場合は「〔墨〕平〔朱〕平」などとする。同種の声点が複数付される場合は「〔朱〕上,去濁」などとする。
声点の位置について、左下:平声、左上:上声、上中:毘富羅声、右上:去声、右下:入声、下中:フ入声の区別を認める。それぞれ「平」「上」「毘」「去」「入」「フ入」とした。
声点の清濁の区別について、単点:清音、横に並ぶ双点:本濁、縦に並ぶ双点:新濁の三種を認める。清音の場合は特に表示せず、本濁の場合「濁」、新濁の場合「新濁」とする。たとえば、「平」は平声清音、「平濁」は平声本濁、「平新濁」は平声新濁を差す。まれに斜めに配列される双点があるが、機能は不明である(たとえば1行目「許」、15行目「是」、208行目「同」など全7例)。
仮名注はすべて墨筆であるが、字体からその大部分は鎌倉期以降のものと判断される。ただし院政期の疑いのあるものは頭に〔院〕を付した。左側に付された仮名は、〔左〕とした。
仮名型は漢語のいずれかに仮名注が付されているもののみ付した。
出現位置は、「aa-bb:ccc」とした。aaは電子画像のコマ数、bbはコマ内行数、cccは全巻を通した行数である。
リンクには「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」の当該コマのURLを付した。
SAT所在には大正新修大蔵経第44巻No.1840窺基撰「因明入正理論疏」のページ数を、「SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018版」に従って付した。
声点、仮名とも呉音系字音を中心とする。
声点加点は、墨圏点が仁安三年と同時期、朱点A、朱点Bは後筆だがそれほど変わらない時期と推定する。
本資料は、院政期における法相宗所用の字音直読資料として活用されるべきものである。
宮内庁書陵部 編,図書寮典籍解題 第5 漢籍篇,,,大蔵省印刷,1960-03,,,203-204,info:ndljp/pid/2937029, 10.11501/2937029
沼本克明,呉音の学習伝承と学統との関係―声点の加点法を通して捜る―,平安鎌倉時代に於る日本漢字音に就ての研究,3093-741032-8203,武蔵野書院,1982-03-20,,,235-261,,
沼本克明,呉音読に於る促音化に就て―フ入声を繞って―,平安鎌倉時代に於る日本漢字音に就ての研究,3093-741032-8203,武蔵野書院,1982-03-20,,,365-401,,
沼本克明,呉音読誦に於る声調変化に就て―毘富羅声の機能―,平安鎌倉時代に於る日本漢字音に就ての研究,3093-741032-8203,武蔵野書院,1982-03-20,,,402-424,,
沼本克明,呉音に於る連濁に就て,平安鎌倉時代に於る日本漢字音に就ての研究,3093-741032-8203,武蔵野書院,1982-03-20,,,445-481,,